大判例

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東京地方裁判所 昭和34年(ワ)9177号・昭34年(ワ)8694号・昭34年(ワ)5321号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕昭和三三年六月一三日原告は被告山上健夫に対して所有家屋一棟を代金二〇〇万円で売渡した、被告健夫は内金五〇万円を即時支払つたが、残金については、一〇〇万円は昭和三三年八月三〇日限り、四〇万円は同年一〇月一日限り支払う、被告健夫が右支払を遅滞なく履行したときは原告は残代金一〇万円の支払を免除する旨の約定ができたが、その支払のため被告健夫が振出した約束手形二通は不渡となつた。また原告は、昭和三三年一二月二六日被告健夫の懇請で、同被告が中央商事株式会社に対して負担していた合計一〇〇万円の債務を代つて弁済し、同被告に対する同額の償還請求権を取得した。かくて原告は、被告健夫に対し家屋売買残代金一五〇万円と償還金一〇〇万円の合計二五〇万円の債権をもつことになつたが、昭和三四年一月一二日同被告との間で、内金一五〇万円を目的とする準消費貸借契約を結び、その弁済期を昭和三四年三月三一日、利息日歩四銭、毎月末日払いと定め、かつ被告喜美を代理する被告健夫との間で右債務担保のため被告喜美所有の本件建物について抵当権設定、弁済期に右債務を弁済しないことを停止条件とする代物弁済および賃借権設定の各契約を結び、翌一三日抵当権設定登記、停止条件附所有権移転請求権保全仮登記及び停止条件附賃借権設定請求権保全仮登記を経た。被告健夫は弁済期に右債務の弁済をしなかつたので、原告はかねて被告喜美から交付を受けていた本登記申請のための委任状および印鑑証明書を用いて、本件建物について右仮登記に基く所有権移転の本登記を経た。かくて原告は、所有権に基いて、本件建物を占有する被告らに対し各占有部分の明渡と損害金の支払を求めた。被告喜美は、本件建物について抵当権設定契約をしたことは認めるが、その他の契約をしたことは否認し、原告が経た所有権移転請求権保全の仮登記は、抵当権設定登記をするために原告に交付しておいた白紙委任状を原告が勝手に使つてしたことで、原告が本件建物の所有権を取得するいわれがなく、所有権はなお被告喜美にあると主張して、反訴で所有権確認と原告の所有権取得登記の抹消を求めた。

判決は、原告の主張するとおりの事実を認定したが、停止条件附代物弁済契約に基いて弁済期の経過とともに原告が当然に本件建物の所有権を取得しうるかについて、次のように判示した。曰く、

「本件のように、抵当権設定と停止条件附代物弁済契約とが同時になされた場合には、特別の事情がない限り、代物弁済の予約をしたものと解すべきであるから、もし期限に債務の弁済がないときは、債権者において予約完結の意思表示をすることを要するのであるが(最高判昭和二八年一一月二八日民集七巻一一号一二〇一頁)、前認定のとおり、被告喜美は、あらかじめ原告に対し仮登記の本登記をする為の委任状等を原告に交付していたのであり、また原告本人の供述によれば、原告は弁済期日前数次にわたつて被告喜美に対し被告健夫が期日に弁済しないときは代物弁済として本件建物の所有権を取得し、右委任状等によつて本登記をする旨を告げたことを認めることができるから、本件においては抵当権の設定は万一の場合の用意にしたものであつて、債権者においては抵当権の実行によるよりは代物弁済によつて債権の満足をはかるであろうことが被告喜美に充分に諒解されていたものというべく、契約の文言どおり停止条件附代物弁済契約が成立したものと解するを相当とし、債権者たる原告から被告喜美に対し更めて予約完結の意思表示を要しない場合にあたるということができる。」

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